東京地方裁判所 昭和44年(借チ)1096号 決定
〔主文〕1 申立人が別紙(二)記載の改築することを許可する。
2 申立人は相手方に対し金二九四、〇〇〇円を支払え。
3 本裁判確定の月の翌月から本件賃貸借契約の賃料を一か月3.3平方米当り金一〇〇円と変更する。
〔理由〕一 本件申立の要旨
1 申立人は、昭和三八年六月東京変速機製造株式会社から別紙目録(一)記載の建物(以下「本件建物」という。)をその敷地である東京都江東区猿江町一丁目一五番一号所在宅地1,121.65平方米のうち宅地80.99平方米(24.5坪)(以下「本件土地」という。)の賃借権とともに譲受け、そのころ土地所有者である相手方の承諾をえた(賃貸借期間は昭和四六年三月まで)。
2 ところで、申立人は、本件建物を取こわして別紙目録(二)記載の建物に改築したいと計画しているが、本件土地の賃貸借契約には、増改築につき賃貸人の承諾を要する旨の特約が存するので、相手方の承諾を求めたが、拒絶されたので、その承諾に代わる許可を求める。
二 当裁判所の判断
1 本件で取調べた資料によれば前記一の事実のほか、申立人は、昭和一六年ごろより東京変速機製造株式会社に入社し、同二六年同社から本件建物を借受け入居していたが、同三八年六月同会社の倒産にともない本件建物を同社から買受け、相手方に名義変更として金一〇万円を支払い賃借権譲渡の承認を受けた各事実を認めることができる。
相手方は、本件建物は老朽化し朽廃も近いうえ、期間満了時には更新を拒絶して本件土地を自ら使用する必要があるので、現段階において改築を認めるのは相当でないと主張するが、前記資料によれば、本件建物は昭和二六年ごろ建築されたものでやや古くはなつているが、相手方において朽廃により借地権の消滅を期待しうる段階には至つていないうえ、申立人と相手方の本件土地の必要性を比較較量するに、相手方が、前記期間満了時に更新を拒絶しうる正当事由が存するとは認めがたいので、相手方の右主張は採用しない。
しかして、前記資料によれば申立の改築は、土地の通常の利用上および法令の制限上から相当なものと認められる。そこで本件申立は認容すべきである。
2 つぎに附随の処分について検討する。
鑑定委員会の意見の要旨は、「増改築を認める場合一般的慣行として承諾料、更新料等の名称で金銭の授受が行われ、また増改築を許可し、借地期間を延長することになる借地人の経済的利益、借地権価額の増価、土地所有者の底地処分価額の減価、土地所有権価額、借地権価額、物価の上昇に伴わない低額の地代金の不利益を考慮したうえ、3.3平方米当り金一六、〇〇〇円(更地価額は金三〇〇、〇〇〇円。借地権価額は金二〇〇、〇〇〇円)、財産上の給付をさせ、かつ地代を3.3平方米当り金一〇〇円にするのが相当である。」というにある。
ところで、本件改築は、本件建物を取りこわし全面的に改築するものであるが、右改築がなされない場合は、本件建物は前記期間更新後も存続し、借地権は右建物の朽廃により消滅することが予想されるが、本件改築は、右朽廃時期を遅らせ、借地期間を、延長し、借地人に利益を与える反面、地主に不利益を与えるのであるから、右利害を調整するため借地人たる申立人に財産上の給付を命ずるのが相当であり、その額は、本件建物の耐用期間、本件賃貸借の経緯を考慮したうえ、従前の裁判例に徴し、鑑定委員会の意見による本件土地の価格(3.3平方米当り金三〇〇、〇〇〇円)の四%にあたる金一二、〇〇〇円、総額金二九四、〇〇〇円と定めるのを相当とする。
なお、鑑定委員会の意見および申立人の希望意見はいずれも借地期間を延長することを前提としているが、延長により、期間満了の際の地主の更新拒絶権を奪うことは相当でないので、本件においては期間の延長はしないこととし、期間を延長しないと、鑑定委員会の意見の給付額はやや高額にすぎるというべきである。
賃料は鑑定委員会の意見に従い、本裁判確定の月の翌月から3.3平方米当り金一〇〇円と変更する。(筧康生)
目録
(一) 現存建物
東京都江東区猿江一丁目一五番地一
家屋番号 一五番二七
一 木造、スレート葺、平家建
面積29.42平方米(8.9坪)
登記簿上23.53平方米
(7.12坪)
(二) 改築計画
(一)の建物を取りこわし
木造鋼板葺 二階建
面積 一階 42.12平方米
(12.74坪)
二階 47.385平方米
(14.33坪)
を建築する。